現場の状況(土壁工事)

 
福井では、4月下旬から5月のGWの頃が、陽気の良い一番の季節になるが、今年は雨が降り曇り空の天気が続いている。

GWの休みが最大11日とか、「今日がGW休みの中日です」とか、聞こえてくるため、仕事をしていてもどこか、心浮き立つような、世の中が明るいような感じがする。
 
消費税が上がって暗い雰囲気を緩和する明るい話がほしい。
 

 
現場では屋根工事が進んでいる。
寄棟の屋根の軒先は、化粧垂木を見せている。
 

 
土壁の復旧部分は、下地の竹小舞が終わり、連休明けに荒壁をつける予定になっている。
土壁については、一昔前の工法で、見ることの少ない工法になっているが、他府県では、今でも一般的な住宅に採用されている。
 
土壁は、自然素材の魅力として取り上げられるが、その柔らかい表情には、性能的な利点も多い。
まず、土壁そのものが化粧材と耐震性の両面をもつ。壁の断熱性を問わなければ、内装と外装の両方の仕上げにすることも出来る。
吸放湿性にすぐれているため、湿度の変化のはげしい寝室の壁には最適と思われる。
蓄熱性があるので、断熱材と組み合わせると夏涼しくて冬暖かい環境を作ることはよく知られている。
また、自然素材のみで作られているだけでなく、廃棄されても材料は竹と縄と土なので、解体時に有害な廃棄物は出ることはなく、その土に水を加えれば、また土壁の材料になる。
 
しかし、土壁の家の工事は、期間が長くかかる。
今の工業製品化した住宅は、平均6ヶ月ほど、早いものだと2ヶ月というものもあるが、土壁だと土の乾燥時期に大きく影響されるため、ゆっくりゆっくりと現場が進むことになる。また、準備、段取りも前もってすることが多いため、結果として完成度の高い住まいになる。
 
 
 2014.05.01

 

 絵様を描く

 
 

参考、懸魚(げぎょ)


 
屋根の破風板には懸魚と呼ばれる部材が取付けられる。
 
多分、水に由来するものを火除けのおまじないで付けることが多いため、その一種だと考えられる。
例えば、土蔵の妻には”水”の文字を形取った飾りを良く目にするし、シャチの飾りを乗せるのもその一つ。
 
懸魚の絵様の多くは波が渦巻くような彫刻が施されている。全体のフォルムが野菜の蕪(かぶら)に似ているため「蕪懸魚」と呼ばれ、今回取付けられる予定の懸魚もその一つである。
その他にも「三つ花」「梅鉢」などがよく用いられる。
彫刻される絵様にハートマークと同じものがあるが、それは建築用語で「猪の目」といい、イノシシの目がなぜハート形なのかはよくわからない。
 
懸魚の両脇にさらに彫刻された部材を取付けることがあるが、それは鰭(ひれ)と呼ばれる。
魚なので鰭があるのは当然だが、懸魚には必ず付くというわけでもない。
魚の鰭そのままの彫刻もあるらしいが、多くの場合はグルグルの波模様が彫られ、やはり火除けの意味からだと考えらる。
 

 
懸魚の大きさは破風板の幅で決められるが、原寸大の大きさで絵様を書き、バランスを取ることが必要である。
 
 2014.04.23

 

 小舞を掻く(かく)

 
 

 
土壁の下地補修をしている。
 
間仕切り壁を土でつくるのに、土だけでは当然、崩れ落ちるので、竹で骨組みとしての下地をつくる。
この下地の作り方は地方によって少し違ってくるが、共通して、木材の貫と割竹で細かなマス目をつくる。
福井では割竹を使うことがほとんどだが、他府県では女竹の丸竹を間渡し竹に使うらしい。
竹材だけで細かなマス目をつくる他に茅などを使うことも多く、越前地方の古い建物を解体すると茅小舞をよく目にする。
また、間渡し竹を柱に取付ける方法は、柱に取付けるための穴をあけて差し込むことが多いが、福井では、ウグイス竹と呼ばれる竹釘を柱に打ち込み、それに間渡し竹を結びつける方法もある。
 
竹をマス目に組むには藁縄を使う。
昔は、稲刈りして脱穀後の稲藁をなうことが夜仕事で冬場の仕事だったらしので、土壁の材料は近場の竹と土と藁と手製の縄、すべて身の回りで用意できる。
 
竹を一本ずつ、縄を絡めるように編み上げていくのだが、小舞の下地造りは「掻く(かく)」という。
 

 
 
 
 2014.04.18

 

 桜が咲く

 
 

 
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし (在原業平)
・・・この世の中に桜の花が無いとしたならば、どんなに心のどかな春を過ごすことが出来るでしょうか
 
あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば はだ恋ひめやも (山部赤人)
・・・桜の花が何日も咲いていたなら、こんなに恋しいとは思わないだろうに
 
ネットからコピペしました。
 
サクラは日本人にとって特別で、それに人生を重ね見ることをしてしまうために日本人の象徴にもなっている。
 
我が家の庭に、まだ、人の背にも届かないソメイヨシノの木がある。
これは6年ほど前に改修工事をしたお寺の庭にあった桜の木で、工事範囲内にあったために移植される予定から外され、処分される前に、譲り受けたもの。
枝から苗木になったばかりで、持ち帰りやすかったこともあるが、根を付けたばかりの桜の木に、独立間もない自分の仕事を重ね合わせ、ゴミ箱に入れることに気が引けたこともあり、庭に植えた。
 
我が家に来てすぐのシーズンはいくつかの花を咲かせたが、その後は、つぼみを付けること無く、植え替えに無理があったのかと思っていた。
そして今年になり、久しぶりに花を咲かせた。
まだ、細くて頼りない枝に咲いた薄桃色の花が冷たい風に揺れている。
あらためて見ると、この6年で木もほんの少しだけ大きくなっていた。
 
 
 2014.04.05