長期優良住宅考-(基礎コンクリート)

 

設備配管はコンクリートの下に埋設する部分を最小限にして更新可能にする。


 
日本の木造建築は、関東大震災以降、大地震の被害の度に構造的な基準を見直し、造り方を変えてきた。
現在の一般的な住宅に採用される工法は「在来工法」と呼ばれていて、その特徴は、①地盤に基礎を通して上部の力を伝え、地盤沈下で建物が傾くことを防止する、②筋交いなどの耐力壁を適度に配置して中地震時に大きく壊れないようにする、②ボルトなどの金物で木と木を繋ぎ合わせて地震や台風の時にバラバラにならないようにする という点にある。
 
「在来工法」以前の構法を「伝統構法」と呼び、特に日本の歴史的な木造建築を大事にする技術者の間では、全く別の構造方法として捉えられている。「在来工法」は「伝統工法」の発展したものというよりは、地震時の安全性のために効率化された工法と理解されている。
「在来工法」の①の特徴とは、鉄筋コンクリート製の布基礎またはベタ基礎で建築物の足下を安定化させることで、今日の住宅の現場で普通に行なわれているものだが、以前の「伝統構法」では石(礎石)の上に柱を立てる「石場建て」、または、地面に掘った穴に柱を埋める「掘立柱(ほったてばしら)」の方法がとられていた。「掘立柱」では土に接する部分から柱が腐るため、「石場建て」になったのだが、「石場建て」では、地盤の状態が悪いと、柱がバラバラに沈み(不動沈下)建物が傾く、地震時に建物の足下が浮き上がり、横滑りを起こして股裂き状態に壊れるなど、建築条件によって問題が起こるために、基礎に建物を緊結する方法が採られた。
 

基礎底盤のコンクリート打設。足で踏み固めるようにすると良い。

 
 
さて、基礎コンクリートについての前段の話が長くなったが、問題は、上部の木造部分は、接いだり、埋めたり、取替えも簡単にできるので、修理を繰り返すことで50年、100年を超えて使用可能といえるが、基礎コンクリートは、時間の経過とともに劣化が進み、補修や修繕が困難な構造部分であるということ。
基礎コンクリートの劣化の代表的な例は、表面から中性化が進み、中の鉄筋に錆が発生して、コンクリートにヒビが入り強度が落ちることが挙げられる。つまり、コンクリート内部の鉄筋まで中性化が進行する時間が、建物の耐用年数ということになる。
基礎上部の木造部分について、50年を超える耐用年数を考えるなら、基礎のコンクリートの耐久性を高める必要がある。
コンクリートの中性化の速度に影響する要因として、施工時の水の量、「水セメント比」があり、住宅に一般的に使われるコンクリートの「水セメント比」60%では50年で3㎝程度(コンクリート内部の鉄筋までの深さ)の中性化が進むと見られているため、生コンクリート中の水分量を抑える必要がある。しかし、水分の少ないコンクリートは施工性が悪くなるため、十分理解をして施工しないと、ジャンカと呼ばれる大きな空隙が発生し耐久性が低下することになる。
コンクリートの施工を「打設」と言うが、足で踏み込み、表面をタンピング(叩くこと)し丁寧にバイブレーターをかけ、締め固めながら施工することでひび割れないコンクリートになる。

 

幸運にもコンクリート打設後の翌日から天気は雨。夏場の天気のいい日には散水養生が必要になるが助かった。


 
また、施工時の天気と気温、施工直後の養生も、コンクリートの耐久性に影響する。施工時に雨が降ると余分な水が内部に入ることになるし、天気が良すぎると乾燥が進み、コンクリートの硬化反応(水との化学反応)に悪影響を及ぼす。その硬化反応は気温にも影響されるため季節によりコンクリートの調合を変える必要がある。
耐久性の高い基礎コンクリートには、「材料の調合」と「打設方法」とその後の「養生」がポイントになる。  
 2015.09.02

 

 長期優良住宅について

 

軒の出を深く取った平屋の計画案。


 
「長期優良住宅」の制度は、2009年から認定事業が開始され、当初の補助制度と「優良」というお墨付きを公的に得られることから、広く認知され、新築の戸建住宅の25%はこの認定を受けているというデータもある。
「長期優良住宅」の内容・認定の基準は、2000年につくられた「住宅性能表示制度」の一部を利用している。「住宅性能表示制度」は、それまでは一般の建て主には「住宅の良さ」の判断が分かり難く、広範囲に及ぶ住宅の性能について、判断する指標があいまいだったものを、細かく項目ごとに示せるように基準を定め、成績表のように段階的に評価できるようにしている。
「長期優良住宅」の制度は、「住宅性能表示制度」の評価基準10項目の中の4項目「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理への配慮」「温熱環境(省エネ)」について高い基準を満たした住宅について、設計内容を審査し「長期優良住宅」と認定をすることになっている。
 
「住宅性能表示制度」ができた時、クライアントから依頼されてこの制度を何度か利用したことがあるが、クライアントが希望された理由は、「自分の住宅について項目ごとの性能を知りたい」「第三者機関のチェックを受けることで安心したい」というもので、「長く住み継ぐ住宅を建てたい」と言う目的はクライアントにも建設業者としての私にも無かったし、「住宅性能表示制度」にもないと思う。
私には「長期優良住宅」の4項目「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理への配慮」「温熱環境(省エネ)」において高い基準を満たすことだけで、長く住み継ぐことができる住宅になるとは考えられない。
 

積雪1mとして構造計画をしているため木太い木造になっている。

 
 
貴重な材料を用い、優れた技と最新の技術でつくられた建築物を定期的に維持保全をしていても、30年から50年で根本的な更新の時期を迎え、その時の個別的・社会的な状況により、修理か建替えかの判断をすることになるが、その判断を建てられた時に約束や拘束をすることはできない。
それは今の東京で起こっている、50数年前の東京オリンピックの時に造られた我が国を代表する建築物の建替えと保存の話や、モダニズム住宅の名作が取り壊しの危機にあることなどからも判る通り、建築の継承は実際にはごく限られた事例で、重要文化財として保存をされない限りは、現在では見ることは少ない。
本来、受け継がれるべき建築でも短期間で壊されるのだから、一般的な木造住宅では30年も待たずに壊されて建替えられる今の日本の状況はなんら不思議には感じられないだろう。
しかし、今の日本の社会状況は、急速な高齢化と少子化で人口減少にあり、これまでの経済成長を前提とした収入の安定を期待することは困難で、30年ごとに住宅に大きなコストをかけることが出来る人はごく一部の人に限られるのではないか。
老後に収入が不安定になり生活が困難になる心配が言われているが、住んでいる住宅も不安定になる恐れに対する対抗策を事前に立てることができるのかを考える必要がある。
住み続けられる住宅、次の世代が住み継ぐことができる住宅が、最終的にはコストが抑えられるのではないか、そのためには「長期優良住宅」の基準に加えて何が必要なのか、について自分の考えを提起したい。
 2015.08.30

 

 打合せ回顧

 

初期の検討案


 
クライアントとの設計時の打合せでは、いろいろなことについて話し合うが、まだ何も決まってない初期の段階では、設計者からの提案という一方向からの説明で終始し、なかなか双方向の打合せによる積み上げにはなりにくい。
施主の特徴や意向を第一条件にしてプランを作り、提案後に初めて出てくる要望があるので、初期の案は打合せのための叩き台になることが多く、私もそれを理解しているので、第一案はクライアントの視点よりは、敷地の条件や周囲の環境から自分が良いと思えるものから導きだしたカタチになる。
住宅は私的な建物で、例えるなら個別の身体の特徴や動きのクセにあわせたオートクチュールのような特別感を求められることが多く、出される課題の一つ一つにできる限り応えたいと思うので、打合せを重ねるごとにプランは変わっていくことになる。
そうした施主との打合せの積み重ねで、プランの合意が形成されていくように見えるが、その積み重ねがただ単なる足し算になり、複雑で独特、テンコ盛りのデコレーションのようなプランになってしまい、どうしてこうなったのか、お互いの合意形成の結果とはいえ、これはちょっとまずいというプランが残ってしまうことがある。
 
打合せの時に想定できることは、せいぜい5年先までのことで、そこにこだわると10年後に、幻をみていたごとくの遺跡のような空間が残る。
ただ、この「ちょっとまずいよね」となりそうな恐れのポイントについて、客観的に話し合うことは難しく、何か違う意図が設計者にありそうだと憶測されたり、「できる」「できない」の効果的判断とはかけ離れた感情の衝突になっては、建物の長期間にかけての安定した利用の目的から外れてしまう。
 

実施案。

 
 
 このことについて、ずっと考えていたが、少しのヒントが見つかった。
「新しいモデルハウスや内覧会を見るだけでなく、築五年、10年、20年,30年というちょっと古い建物を見て、何が古くて、何が気にならないか、自身の感受性を確かめておく」ことはどうか。
どこか新鮮、斬新なカタチ・建材もすぐに既成のモノになり、古さが目につくようになるが、時間が経っても「感じがいい」と思える建物がある。何がそう感じさせるのか、時間が経った既存の建築を見て回ることの方が大事ではないか。
 2015.08.14